リハビリ科や人間ドック施設(脳ドック部門)への転向する医師が増加
クモ膜下出血や脳梗塞などの血管障害や、急性硬膜外血腫、脳腫瘍の外科的治療を中心に行う脳神経外科。過酷な労働環境と訴訟リスクを嫌い脳神経外科を希望する若手が減少しているため、現役医師の負担がますます重くなるという「負のスパイラル」の真っ只中。
高齢者の増加に伴い急性硬膜外血腫の手術が非常に多くなっており、同科の全手術数なかでトップを占めるに至っています。大手術になることはほとんどありませんが、救急搬送の患者に対応することになるため、予定外の手術となり、医師は休むこともままなりません。
手術の技量以前に、患者や家族への説明が非常に重要となるため、問われるコミュニケーション能力は全診療科でもトップクラスの脳神経外科。心臓血管外科と並び「手術の花形」のイメージが強いですが、長時間かかる高度治療だけを思い描いて同科に飛び込んで、理想と現実のギャップに悩む医師も少なくないようです。
多くの脳神経外科医が疲弊している近年、脳神経外科での経験と技術を活かしつつ、家庭と仕事の両立や、自身の体力と仕事量の関係を考慮に入れて、リハビリテーション科や精神科、人間ドック施設(脳ドック部門)などに転科する方が増えています。
脳神経外科の代表的な疾患
脳梗塞
動脈硬化の進行などで脳血管が狭くなり、そこに血液の塊などが詰まって、そこから先の血液が途絶えるものです。血液の流れが遮断されると、そこから先の組織に栄養が届かないので、組織に壊死が起こり、神経機能が麻痺してしまいます。その結果、手足の痺れや麻痺、意識障害、最悪の場合、死に至ることがあります。
脳出血
脳血管で動脈硬化が進行すると、血液の圧力によって動脈瘤が生じることがあります。そこに高血圧などで強い圧力がかかると、もろくなった部分が破れて出血が起きるのが脳出血です。出血は時間が経てば固まりますが、それが周囲の脳組織を圧迫することで、手足の痺れや麻痺、言語障害、意識障害などを引き起こします。出血の量や部位によって症状は異なりますが、重篤なケースでは昏睡・死に至ります。
脳腫瘍
頭蓋の内側にできる腫瘍の総称が「脳腫瘍」で、髄膜腫、下垂体腺腫などの良性のものと、神経膠腫(ギリオーマ)などの悪性のものがあります。また乳がんや肺がんから転移したものもあります。症状は、腫瘍の発生部位によって異なりますが、頭痛や吐き気・嘔吐などが代表です。手足の麻痺、視覚障害、記憶力低下などが現れることもあります。