精神科に転科するなら、指定医の取得を目指せる医療機関を選びましょう
先進国の中でも高い自殺率や、学校でのいじめを原因とする不登校・引きこもり、職場におけるノルマや人間関係の軋轢などからメンタル面で問題を抱えている人が急増しているこの10年、精神科医の活躍の場は病院・クリニックだけでなく、企業や学校などにも広がりを見せています。
一般世間からも広く認知されるようになり、社会的ニーズも高まっている精神科は、内科、小児科、産婦人科など専門科目や年齢をを問わず、幅広い医師から転科先の有力候補として挙げられています。
内科系・外科系の医師であれば、精神疾患の合併症の多くを診ることができるため、精神科は他の診療科に比べて、転科後も今までの経験とスキルを活かしやすいというメリットもあります。
また、近年は産業医として企業で働きたいと希望する医師が増えていますが、企業は従来のように内科的な対応ばかりではなく、メンタルヘルスもしっかり診ることができる医師を採用する傾向にあるため、「是非とも指定医(精神保健指定医)を取得しておきたい」と転科を希望する方も少なくありません。
精神科医のキャリアを考えるうえで、「指定医」の資格取得は大きな意味を持ちます。指定医は取得するまでが一苦労ですが、医療機関の立場で考えると、指定医の有無で診療報酬や救急搬送への対応で大きな違いがでるため、当然有資格者を優遇して採用したいと考えます。
具体的には年収で100〜200万はプラスされるため、多くの内科系の医師よりも年収は高くなります。また、指定医の募集は「外来のみ」から「療養病院」まで、ワークライフバランスの実現が可能な案件が多いため、女性医師が働きやすいことも人気の理由の一つです。
ただし、精神科の仕事に対する「やりがい」や医師としての「今後のキャリアプラン」よりも、給与や労働環境といった「現状の不満」が主な転科理由となる場合、以前のように転科をしやすい診療科ではなくなってきています。
「精神科=楽」というイメージが強いようですが、想像以上に大変な職場ですし、近年増えている高齢の認知症患者は、転倒・骨折のリスクがあるうえ、意に反して過剰な拘束をしなければならないケースもあります。患者の家族とのコミュニケーション不足が原因でトラブルになるケースも増えていますし、介護分野との連携も求められ、仕事量は増加傾向にあります。
以前に比べて全国的に指定医の需要が増えているため、転科する際には、豊富な症例を経験できる医療機関を選ぶことが、将来を見据えた上での正しい選択といえます。大学病院以外にも指定医が取得できる民間の医療機関は多くありますが、求人自体は決して多いとはいえないので、医師紹介会社などの無料サービスを活用して、日頃から情報収集を行っておくことが大切です。
精神科の代表的な疾患
適応障害
学校や会社などの社会環境に上手く適応できないことで、さまざまな心身の症状を呈する症候群のことを指します。治療では、原因となっているストレスの軽減が第一となるため、必要に応じて休職、休学しての休養も行います。カウンセリングを行って、情緒面の安定を図り、主要な症状に対して薬物療法を行うことがあります。
うつ病
気分がスッキリせず憂鬱になり、@くよくよ考え込む、A物事への興味や関心が薄れる、B考えがまとまらない、など心の症状が増悪し、仕事や身の回りのことができなくなります。十分な休養をとると同時に、脳内化学伝達物質のバランスを調節する抗うつ剤の投与が治療の中心となります。
人格障害
感情をコントロールできない、対人関係能力に劣るなどにより、社会的・職業的な領域で機能的に障害が起きている状態です。この障害は人格の偏りでもあるので、根本的な治療は困難です。グループ精神療法、精神分析的精神療法、行動療法、認知療法などが行われますが、その有効性には個人差があります。気分の変動や不安に対しては対症的に薬物療法も用いられます。
パニック障害
前触れとなる症状がないまま、ある日突然、呼吸困難や動悸、息切れ、息苦しさなどの発作が現れます。同様の発作を繰り返すうちに、「ひょっとしたらまた発作がやってくるのではないか」という不安に苦しめられるようになります。治療法としては薬物療法を主体にして、発作が起こらなくなれば、発作が不安でそれまで避けてきた場所や乗り物に徐々に挑戦するようにします。
不眠症
不眠には、@なかなか寝付けない入眠障害、A夜中に何度も目が覚める熟眠障害、B明け方に目が覚める早朝覚醒などの症状があり、これらの多くはうつ病の患者にもみられます。治療の中心は薬物療法で、症状によってス民剤を使い分けていきます。同時に、生活習慣やス民間今日の改善も必要となります。